
ILLUMINUS Summer Stage「花嫁は雨の旋律」が8月16日(水)-20日(日)まで中野ザ・ポケットにて上演されることが発表された。
脚本・演出は吉田武寛、主演は中谷智昭。吉田武寛はILLUMINUSが手がける多くの舞台作品の脚本・演出を務め、アートディレクターとしてILLUMINUSのクリエイティブの中核を担う。中谷智昭はILLUMINUSのメンバーとして、ILLUMINUS公演3回目の出演となり、チームの中で大きな存在感を示している。いまやILLUMINUSの顔ともなった二人のクリエイティブに迫る。
封じてきたことを「やっていいんだ!」と思うことができた。
それが芝居との出会いだった。(中谷)
・吉田さんが演出家になるまで、どのような道のりがあったのでしょうか。
吉田 中学生の頃から声優やアニメに興味があって、15歳頃に声優さんの所属している劇団へ入ったところが始まりです。16歳になって、高校で演劇部に入ったのですが、脚本と演出を担当するようになったら、そちらの方が楽しくなってしまって(笑)。大学からは、自分で劇団を作ってずっとやってきました。
・中谷さんは、これまでどのような活動をしてこられたのでしょうか。
中谷 中学の頃、クラスの中では引っ込み思案な性格で、周りとあまり話すのが得意ではなかったんですね。それを見かねた担任の先生から「この役をやってみろ」と言われて、文化祭で演劇をやることになったのが、お芝居に触れた最初のきっかけです。緊張もしましたが、台本上に「泣く」「笑う」と書いてあるので、クラスの中では封じてきたことを「やっていいんだ!」と思うことができたんです。そうしたら、今まで話しかけてくれなかったクラスメイトたちから「すごく良かった」と言ってもらえて。「お芝居って楽しいんだな」と思うようになりました。主役が4人~5人いるような劇で、その中の1人でした。
吉田 王子ですか(笑)?
中谷 そんなわけないでしょ!設定としては、世に生まれる直前に、神様が「お前たちにちょっとだけ今後の人生を見せてやるから、生まれるかどうか判断しろ」と言って、人生の一部を切り取って見せてくれる…死にそうな顔をしながらビルに登っていくところとか。不幸な未来を予想させる人生の断片を見せてくれるんです。「それでも行きたいのか?辞めるか?」みたいなお話でした。中学生にしては、重かったかもしれないですね(笑)。小劇場の舞台に立ち始めたのは、13年前くらいです。気付いたら「芝居を続けていく」と思ってしまっていて、学生時代の演劇部つながりでお話をいただきました。その時の自分を振り返ると、プライドが高かったなと思いますが…(笑)。
・お2人の出会いのきっかけは、どのような感じだったのでしょうか。
吉田 2012年に自分のカンパニーで出演者を募集している時に、彼が応募をしてくれたんです。新宿の喫茶店で1回お茶をして(笑)。
中谷 うんうん、お茶をしたね。
吉田 それで「面白い人だな」と思って。
中谷 顔が?
吉田 いやいや(笑)。その時からこんな感じだったんですよ。
中谷 ウソだウソだ!もうちょっとちゃんとしてたでしょ!
吉田 その時はもうちょっと固さがありましたけどね(笑)。でもこんな感じだったんですよ。壁を作らない人だなというのが第一印象ですね。
・中谷さんは、吉田さんに会ってみてどんな第一印象でしたか?
中谷 第一印象か。第一印象…
吉田 僕ね、結構覚えてるんですよ。あの時の…ベローチェだったかな(笑)。
中谷 新宿のベローチェ!
吉田 西口のベローチェでしたね(笑)。
中谷 優しそうな人、というのが第一印象でしたね。正直、緊張してたんです。「壁を作らない」なんてとんでもないですよ!緊張はしていました。僕はもともとファンタジーや、派手なものが好きなんです。どこかないかなと思って探していた時に、考えつくされた企画や、信頼をおけるカンパニーだという雰囲気に惹かれて応募しました。この人なら身を任せられる…って。うわ、俺エラそう…(笑)
吉田 アハハ(笑)出会ったのはもう5年前半くらい前じゃないですかね。
・吉田さんも、中谷さんに何か強く惹かれるものがあるのでしょうか。
中谷 わ~、なんか恥ずかしいから聞かないでおこうっと。
吉田 フフフ(笑)。出てもらったのは2013年からで、毎回出てもらっていて…
ILLUMINUSでも3回…そうですね、大事な時にはいつも出てもらっていますね。
中谷 恐縮ですっ(笑)!

みんな彼(中谷)のことを好きになってしまう。そういう「ズルさ」が彼の魅力。(吉田)
・役者としての中谷さんの魅力をお聞かせ頂けますか。
吉田 みんな味方にしてしまうような力がありますね。みんな彼のことを好きになってしまう。そういう「ズルさ」みたいなものを持っていますね。あとは…僕が派手好きというのもあるのですが、ダンスや笑い、何でも表現できるところが魅力です。
・中谷さんは、吉田さんの演出家としての魅力はどのような部分に感じられているのでしょうか。
中谷 そうですね、まずやっぱり軸がちゃんとしているところですかね…恥ずかしいなあ…。
吉田 アハハ(笑)。
中谷 そうですね…ブレてほしくないところはブレずに、ちゃんと存在してくれるところです。吉田さんの中にちゃんと表現したいものがあるので、演者としては安心できるんです。安心して身をゆだねられますし、逆に「自分がやるんだったら、こんなことをやろうと思うんだけど」と提案もできる。ダメだったらダメと言ってくれますし、(出演が)4回目5回目になってくると、ちょっとおこがましいのかもしれないですが「あっちに行きたいのかな?こっちに行きたいのかな?」というのがわかるようになってくる。自分のやったことをきちんと受け止めてくださるので、作品作りを一緒にできる感覚なんです。そういう人にはなかなか巡り合えないと思います。締めるところはちゃんと締めてくれるし…あぁもう、よくわからなくなってきちゃった…なんか恥ずかしい!やっぱり恥ずかしい(笑)!
吉田 アハハハ(笑)
・5年間で、深い信頼関係が築かれてきているといった印象のお2人ですが、吉田さんは今後の舞台にも、中谷さんへ出演して頂きたいというお気持ちはお強いのでしょうか。
吉田 そ、そうですね…(照)。
中谷 目を見て言ってもらっていいですか?
吉田 恥ずかしい(笑)。
中谷 ほらね、ねっ(笑)!
・中谷さんが、演じられる時に最も心掛けていることは何でしょうか。
中谷 (舞台に)「立つ」上では、僕はお客様の表情はかなり意識して立たせて頂いているつもりでいます。生きるということは、良いことばかりではないから…せめて劇場でお芝居を見て、何かを感じてくださっているときぐらいは没頭していただきたいですし、お客様の表情は大切にしています。
・物語に没頭している自分と、お客様の顔を見ている冷静な自分、両方が存在しているのでしょうか。
中谷 どちらもいます。「お客様、こう(感じている)かな?」と思う時ほど、お芝居に集中できていたりして。アンテナは両方立っていますね。
・吉田さんは俳優・中谷さんをどのように感じられていますでしょうか。
吉田 そうですね、今までは「3枚目の良いお兄さん」という印象の役が多かったので、これからは、カメレオンのように色々な役をやってもらいたいです。

2011年LIPS*Sを立ち上げ、全作品の脚本・演出・プロデュースを担当。
2015年合同公演「Knights」では動員2200人を突破。
代表作に、
・amazarashi「ジュブナイル」原案舞台『ジュブナイル』(シアター1010)
・HIDETAKE TAKAYAMA氏のMV『Express』を舞台化『Express』(シアター1010)
・25,000部発行写真集の舞台化『NO TRAVEL, NO LIFE』(著:須田誠)
・MONKEY MAJIK『Headlight』とのコラボレーション朗読劇
・お笑いコンビ「チュートリアル」「チーモンチョーチュウ」結成話の朗読劇化
・Mixiゲーム「輪華ネーション」のアクトリーディング舞台「輪華ネーション〜はじまりの章〜」
・サイバーパンク朗読劇『Rays Of Light』
・Comicoベストチャレンジ連載漫画「憑き人。」原作のリーディングライブ『憑き人。』
・フラッシュアニメ『終わらない鎮魂歌を歌おう』舞台化
等がある。
文芸者主催 第2回「人生いろいろ賞」短編部門にて優秀賞受賞(書籍化)。
ナムコナンジャタウン主催「本当にあった怖い話」短編部門にて優秀賞受賞。

【代表作】
「水月鏡花 -竜馬夢双-」(脚本・演出:吉田武寛 )
「ジュブナイル」@シアター1010 (脚本・演出:吉田武寛 )
サイバーパンク朗読劇「Rays Of Light」(脚本:春日康徳 演出:吉田武寛 )
「おおばかもの〜おおばかものだけど、わるいやつらではない〜」(演出:笠原哲平 脚本:ゆうき)
「Knights アーサー王と悲哀の花嫁 -King Arthur and the Bride of the sorrow-』@新宿シアターモリエール(脚本・演出:吉田武寛 )
Music Thetaer「Express 」@シアター1010(脚本・演出:吉田武寛 )
『Knights-ナイツ—』@中野ザ・ポケット(脚本・演出:吉田武寛 )
吉田武寛(演出家)× 中谷智昭(俳優) インタビュー【後編】は7/11を予定
企画・構成:小宮山薫 インタビュー& 文 :Murata Yumiko 写真:豊川裕之