舞台「家族のはなし」主演:木戸邑弥 役
いよいよ8月17日より舞台「家族のはなし」が開幕する。原作は2013年に、長野県出身の鉄拳が信濃毎日新聞社の140周年を記念して制作したパラパラ漫画。「アジア太平洋広告祭」フィルム部門、プレス部門ダブル受賞作品でもある本作品を、初演に引き続き東京と長野2都市同時開催開催を予定している。本公演に対する意気込みを俳優の木戸邑弥にたっぷりと語ってもらった。



――本作は「家族」をテーマに、鉄拳さんが故郷の長野から上京した経験を題材としています。原作のパラパラ漫画をご覧になっていただいた時の感想をお聞かせいただけますか?


僕が初めて「家族のはなし」を見た時はすでにとても話題になっていて、世間の皆さんからも「とても感動する」という声が多く上がっていました。実際に見せていただいても、やっぱりとても感動しましたね。映画でも舞台でも、家族系のお話は一番感動してしまうタイプなんです(笑)。そのせいもあって、とても僕の胸に刺さった作品でした。今回このように舞台をやらせていただけるのは素直にとても嬉しいです。僕も一人っ子で奈良から上京してきて一人暮らしをしている…という状況もあるので、自分の経験を生かすことができたら。良い方向に反映されればいいなと思っています。


――奈良から上京されて現在のお仕事をされているということで、リンクする部分も多かったのではないでしょうか。

そうですね。今回は東京に出てバンドをやろうという話でもありますが、僕も中学生ぐらいの時に文化祭で「楽器をやろう」と友達に誘われてやっていた時期があります。本当に趣味程度ですが、この時期の夢や親に対する反抗期のようなものは自分にもありました。まだまだ失敗したことが少ない年齢ですよね。ぶち当たる壁っていうのは社会に出てからの方が大きくなる。それを経て人間として成長していく姿っていうのは自分自身も経験してきたことだし、 お客様もとても共感してくれる作品なんじゃないかなと思います。


――東京に上京されたのは、芸能活動がきっかけだったのでしょうか。


そうですね。中学ニ年生ぐらいの時に、この業界に入るきっかけがありました。中学三年生の一年間は、奈良から通っていました。高校入学を機に、より仕事がしやすい東京に上京したという形です。


――家族の理解がないと、活動は難しかったのではないでしょうか。


結構、家族の仲が良くて、一人っ子というのもあって、両親は「好きなことをやりなさい」と言ってくれていました。反対とかもなく、背中を押してくれた感じでした。両親には両親なりの不安や心配があったと思いますが、小さい頃から「これをやりたい」「あれをやりたい」と言ってきたことが少なかった方なので、珍しく自分の口から「やりたい」と言ったものが芸能活動でした。


――影響を受けたもの、きっかけはあったのでしょうか。


小さい頃から地元でダンススクールに通っていたのですが、テレビでダンスをしている人を見て「やってみたい」と思って始めたのがきっかけでした。初めて両親に「やりたい」と言ったことだったと思います。ダンスは中学を卒業するくらいまで、割と長く続けていました。そこから自分もこうなりたいと、だんだん芸能界の方に興味が湧いていきました。小さい頃から夜更かしをする子で、両親と一緒にTVドラマなどを見るのも好きだったので、チャレンジしてみようかなと思いました。


――ご両親と本当に仲がいいんですね。


はい、今でもとても仲良しです。二十歳を超えてからは、一緒にお酒を飲んだりもするようになりました。


――ご家族の支えを感じたエピソードなどを教えていただけますか。


母は小さい頃から、僕を褒めて褒めて……というタイプでした。逆に父親からはあまり褒められたことがなく、かといって怒られたというわけではないのですが、あまり褒められたなという覚えがなくて。でも、この仕事を始めてから褒めてくれるようになったんです。作品を見に来てくれたりもして、それが僕にとって結構嬉しかったというか。ファンの方や演出家さんから褒めていただけることはもちろん嬉しいのですが、親父が褒めてくれるのは、なんだか一番嬉しいですよね。親父が褒めてくれたから、今でも続けられるのかなって思ったりします。親父は別に支えるつもりで言っているわけではないと思いますけど(笑)、僕は結構、毎回その言葉に支えられていますね。


――ご両親は結構観劇にいらっしゃるんですね


そうですね。奈良から東京に来てくれることもありますし、大阪公演があれば、すぐ来てくれます。あと、最近は出演作がDVD化されることも多いので、どうしても来ることができない時はDVDで見てくれたり。欠かさずに、いつも見てくれていますね。


――今年の舞台出演は今回で何本目になるのでしょうか。


今回で三作品目です。主演は、令和初。「令和初主演」ですね(笑)。


――主演で出演する時と、そうでない時の心境はやはり違うのでしょうか。


僕は昔からリーダー気質ではなくて、「ついてこい」みたいなタイプでもなかったので、無理にではなく「ついて行きたいな」と思ってもらえるような人になりたい、と思っていました。稽古場でもお芝居を通して「この人のためにお芝居したい」と思ってもらえるようになりたいと、主演の時は思います。逆にそうでない時は主演の方がメインなので、その人を「どうしたらもっとよく見せられるかな」とか「こういう風にしたら、こう返してくるな」とか、そんな感じを心がけていますね。「主演のためにどうするべきか」を一番よく考えます。


木戸邑弥

1992年11月9日生まれ、奈良県出身。2006年、第19回ジュノン・スーパーボーイコンテストで審査員特別賞し、翌年にドラマ「チョコミミ」でデビュー。その後、ドラマ「ごくせん」やミュージカル『テニスの王子様』、舞台『押忍!! ふんどし部! 』、『ROCK MUCICAL BLEACH』などの話題作に続々出演。最近の主な出演作に、舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』、『弱虫ペダル〜箱根学園新世代、始動〜』、『ジョーカーゲーム』シリーズ、『GEM CLUBⅡ』、『COCOON〜月の翳り星ひとつ〜』、ミュージカル『ドリアングレイの肖像』などがある。2019年9月には舞台『仮面山荘殺人事件』、12月には『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』に出演予定。

――今回の「家族のはなし」では、アイドル活動をされていたりする方や、少年少女合唱団が入ったりなど、バラエティに富んだ方々が舞台を通して集結するといった面もあります。舞台を通じて、チャレンジしてみたいことはありますか?


今回、舞台でご一緒させていただく方は全員「はじめまして」の方で、顔見知りの方は一人もいません。僕は人見知りな部分もあるので、そういう意味では「大丈夫かな」という部分もあるのですが、そういう方々と舞台を通じて一つのものを作るというのは醍醐味でもありますし、楽しみでもあります。それぞれの方が持っている強みというのがあると思うので、実際にどう表現するのかというのも楽しみです。僕は役者だけをやってきた人間なので、いろいろな場所から集まったメンバーでどんな化学反応が起きるのかなと。自分はまだまだなので、色々なものを見て勉強するいい機会かなと思うし、単純に楽しみでしかないです。他の作品でお笑い芸人の方とご一緒させていただいたこともありますが、その人にはその人の求められているもの、僕には僕の求められているものがあるし、求められているものは違うし、持っているプライドもそれぞれ違う。自分ができないことをやってもらえる、という心強さもあります。作品にたくさんの可能性が生まれるので、お互い支え合いながら、その可能性をどんどん広げていけたらいいなと思います。


――初めて脚本を読んだ時の第一印象をお聞かせいただけますか?


楽しくなりそうだな、という印象です。僕は演出をしたことがないですが、目で見ても楽しい要素が、いい感じに膨らんでいる。エンターテイメント性もあって、この物語を舞台でやる価値があると感じました。実際にどういう演出で、どういう形になっていくのかも楽しみですし、純粋に感動できる物語だと思います。あまりこちら側がそれを求めすぎないようにしたいなというか、物語自体がとても感動的なので、大げさにわざとらしくはしない方がいいなと思っています。


――元々はダンススクールに通い、芸能のきっかけを得たという事ですが、現在の仕事にハマったきっかけはありますか


一番初めが映像のお仕事だったのですが、右も左も分からなくて、自分ができていないことはわかっても、何をどうすればそれが改善できるのかということもわからなかった。すごく難しいなと思いました。だけど、人間は昨日より何か一つでも改善して……例えば少しでも体が柔らかくなったとか、自分でつかんだ時に楽しさが生まれると思うんです。それを得た瞬間が、楽しさが生まれた時でしたね。舞台は一ヶ月時間をかけて作り込んでいくので、その中で何回も言葉をもらって自分なりに考えてやっていく中で「こういうことなのかな」という、何か掴んだ瞬間がありました。その時にとても楽しく感じて、もっともっとやりたいなと思いました。色々な演出家さんとやらせていただく機会も増えてきて。人によって求めるものも違うし、プロセスも違う。終わりがないですね。


――最も影響を受けた作品はありますか?


当時、うちの事務所で企画をした「押忍!!ふんどし部!」という作品です。河原雅彦さんに演出をしていただいて、自分にはとても響きやすい相性がありました。僕らもとても若いキャストだったのでビビりまくってもいて(笑)。でも、とてもとても優しい方なので、そんな方がこの業界に入りたての人間に指導してくれる…本当にうれしいなと思いました。


――お芝居は、演出家さんにどんどん投げていくような形なのでしょうか。


最初は「これはあまり枠から大きく外れてないよね」というのをやってみる感じですね。自分のためには行っていないというか、周りがどんな感じにやるのかを見たいタイプなんです。それで、周りにいない部分を僕がやろう、という感じなので、自分がどうこうとか、自分がこういうのを求められているということも、ある程度の枠から外れないことしかやらないです。周りの感じを見て、演出家さんが初めての方だったら、どういうことを求められているのかとか、どういうことをこの作品で伝えたいのかとか、どういう画を見せたいのかとか、割と観察する期間として、最初の方を使ってしまいますね。


――俳優としての目標はありますか?


自分をよく見せるのは簡単だと思うんです。いくらでも方法はあるし、よく見せることができる。でも僕は、逆に他の役者さんをうまく見せることができる俳優さんになりたい。それを心がけてやっています。誰でも上手く、よく見えればいいなと思うし、周りの人が褒めてもらっているのを聞くと嬉しくなります。僕と同年代の役者で、一緒のシーンをやっている時、お互い言葉では何も言わないのですが、僕も「こいつをよく見せよう」と思うし、向こうもそう思っていたと思うんです。そういう役者とやれた時、すごく良かったなと思うし、相手の役者のことを「この役者好きだな」と思ったんですよね。自分もこういうスタンスで続けていきたいなと思いました。


――「こういう作品に出たい」「誰々と共演したい」というような目標もあるのでしょうか?


目標はもちろんあります。今はストレートプレイや音楽劇などもやったりしますし、2.5次元と呼ばれる舞台にも出演させていただいてます。 共演したい俳優さんは香川照之さんです。とても大好きで、舞台で共演というのはすごく難しいだろうなと思うのですが、香川さんは他の役者さんをうまく見せるのが上手な俳優さんだと思います。真ん中も張れるけど、脇でもちゃんとやっている印象が強い。僕の価値観では、しっかりお芝居ができるということではなくて、真ん中をたてることができるということが素晴らしいなと思うんですよね。だから一度共演してみて、どういう風にやっているんだろうと。すごく気になりますし、話を聞いてみたいです。


――今回は東京公演と長野公演が1日ありますが、東京公演と地方公演での感触の違いはありますか。


せっかくの長野公演で1日だけというのももったいないし、これからはもっとたくさんできるようになるといいですね。地方公演では、お客様の雰囲気が全然違いますね。会場の雰囲気、期待感がすごいというか。すごく期待を持って見に来てくださっているという雰囲気。舞台の中でちょっと笑いを取るシーンがあっても、地方によってツボも違いますし「こういうのがうけるんだな」「こういうのが違うんだな」という、張りつめている緊張感が地方によって全然違う。どれだけ間を取るかというのはその日によって変えているので、自分の中でその感情を探るのも楽しいです。


――これからご来場いただく方へのメッセージをお願いいたします。


僕は27になる年なのですが、僕と同世代や、もっと下の二十歳ぐらいの子、これから色々な人に立ち向かっていかなければいけない年代の皆様にももちろん見ていただきたいです。逆に親くらいの年齢の方にも、お子さんがいるいないに関係なく見ていただきたいなと思います。本当に幅広い年代の方に見ていただきたいです。どんな年代の方も楽しんでもらえる内容なので、気軽に劇場に足を運んでいただければ。良いものを見せられるし、絶対に後悔させないと思います。一生懸命頑張りますので、是非劇場に足を運んでください!


ライター:Yumiko Murata /カメラ:鶴田健吾(studio Kite)/企画・インタビュー:小宮山薫(ILLUMINUS)

【公演名】
長野放送開局50周年記念 舞台「家族のはなし」(長野公演)
舞台「家族のはなし」(東京公演)
【日時】
2019年8月17日(土)〜8月25日(日)
【原作】
鉄拳
【脚本・演出】
吉田武寛(LIPS*S, ILLUMINUS)
【劇場・日程】
<長野公演>
日程: 2019年8月17日(土)
会場:大町市文化会館大ホール
所在地:〒398-0002長野県大町市大町1601-2
<東京公演>
日程: 2019年8月21日(水)~25日(日)
会場:六行会ホール
所在地:〒140-0001 東京都品川区北品川2-32-3
【公演スケジュール】
<長野公演>
8月17日(土)16:00
<東京公演>
8月21日(水)19:00
8月22日(木)19:00
8月23日(金)14:00
8月23日(金)19:00
8月24日(土)14:00
8月24日(土)19:00
8月25日(日)12:00
8月25日(日)16:00

【キャスト】
木戸邑弥

まなこ(Q’ulle)
高岡裕貴
西村菜那子(NGT48)
高橋彩香(AKB48)
中島礼貴
HAKU(SUPER FANTASY)
澤井俊輝(Studio Life)
西村美咲
伊藤玲奈
江益凛
堀ノ内 翼
宮平もりひろ
松田佳子
あすぱら(COJIRASE THE TRIP) ※
芦田千織
宮川智司

中谷智昭
新里哲太郎
三浦剛


※澤井俊輝は東京公演、あすぱら(COJIRASE THE TRIP)は長野公演のみの出演

<アンサンブルキャスト>
尾形杏奈
後藤楓
高坂美羽
田中亜美
仲山コマ(BANZAI JAPAN)
松井りんか

【公式HP】
http://www.kazokunohanashi2019.com
【公式Twitter】
https://twitter.com/KazokuTekken
【主催】
大町市文化会館(長野公演) NBS長野放送(長野公演) ILLUMINUS

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