トップリード新妻悠太短編傑作の原作、「喫茶ライフ」の再演が発表された。
初演でマスター役を演じた赤沼正一と、再演でマスター役を演じる中谷智昭が、今作への想いを語る。


・赤沼さんはILLUMINUSインタビュー初登場ですが、普段はどのような活動が中心となりますか?

赤沼 舞台以外では映像作品が多いですね。最近では再現ドラマの仕事も多く、月に1~2本から、多い時は週に1本ほど出演しています。テレビをつけると、ちょこちょこと出てきたりするので、ぜひ探してみてください(笑)。
「いた!」ってなると思うので。


・同時進行で、舞台でもご活躍されているのですね。

赤沼 僕の中では(舞台は)年に2本くらいがベストなのですが、縁あって今年はこれで4本目になります。
舞台はすごく楽しいので、お客さんには「(出演は)今年、これで最後」と言いながらも続いてしまって…。
「今年は最後だよ詐欺」みたいになっちゃって(笑)。最終的に、今年の最後はこの「喫茶ライフ」になったので、良い締めくくりになるんじゃないかなと思っています。



・中谷さんもかなりの頻度で舞台出演が続いていますが、お2人は作品ごとに、どのように気持ちの切り替えをされているのでしょうか。

赤沼 僕は…どうなんですかね。どこで切り替わっているんだろう…。
僕は、前の作品の台詞を全部忘れちゃうんですよ。脳みその許容範囲が狭いんですよね(笑)。
新しいのが入ると、古いのが抜けていっちゃう。だから前回、中谷くんとやった作品(「花嫁は雨の旋律」)の台詞も「おつカレーライス」「おはヨーグルト」しか覚えてない。

中谷 アハハハ(笑)!もっと良い台詞あったでしょ(笑)!

赤沼 あと覚えてるのは、トゥールビヨンくらい。

中谷 あ~、こびりつきますよね、トゥールビヨンは。

赤沼 そうそう。でも、そのくらい。だから今回の「喫茶ライフ」も、まだ(脚本を)読んでいないですが、読んだ時点で前回の台本は全部、抜けていっちゃうと思います。トミーはどう?

中谷 僕もです。だから「もう一度「花嫁は雨の旋律」を上演して」って言われたら、大変だと思います。

赤沼 俺も無理だと思う。

中谷 全く同じものは、恐らくできないと思います。僕はポンッと飛び込んじゃうタイプというか…今は本番前に集中する時間が、ほぼないんですよね。「本番前30分は、完全に集中しないと舞台には立てない」など、色々なタイプの俳優さんがいると思うのですが、僕は幕が上がってパッと目が合った瞬間に、相手役の人に任せてしまう。身を委ねてしまうんです。相手との関係性が自分の中に入ってくる感覚なので、演じ分けや切り替えという作業は、そんなにないんです。でも、必ず1回やっていることはあって。僕の大好きな表現者の方がされていることなのですが、「1回、観客になる」。サッカーを観に行ったり、誰かのお芝居を観に行ったり。出すだけじゃなくて、インプットする。受け取る側になることで「お客様がどういうものを見ているか」という感覚を取り戻すような感覚です。「1回普通の人に戻る」ということをしています。

赤沼 わかるわかる。僕の場合は「自分が今、板(舞台)の上に立っているのは、どういう感覚なのか」というのを、俯瞰で見ようとします。見られるときと見られない時というのはあるのですが、外からどういう風に見えているのかを、なるべく見ようとしています。それは、お客様に観てもらって初めて、作品は完成すると思っているからです。どんなに良い作品ができても、観てもらえなかったら意味がない。プロとして、お客さんにどれだけ愛情と責任を持って届けられるかというのが、僕らの仕事だと思います。

中谷 本当にそれだと思います。ほんっと、それだと思います!

赤沼 僕らが見せたいものがどういうものかというのを、ちゃんと自分たちが認識していないと。…ちょっと、初めて良いこと言ってみた。

中谷 ふふふ(笑)。とんでもない。初めてじゃないですよ。

赤沼 まだ午前中なので(笑)。

中谷 お酒が欲しくなりますね(笑)。




▼吉田さんの演出、ILLUMINUSの作品について
・中谷さんはILLUMINUS作品は4回目の出演、赤沼さんへ3回目の参加となります。
外部の舞台公演、撮影現場を経験しているお二人ですが、ILLUMINUS公演、吉田さんの作品の特徴は?

赤沼 吉田さんの最初のイメージは、物腰がすごく柔らかくて、人当たりが良くて、シャイな感じ。僕より結構年下なんです。それもあって、えっと…、「マスコット」みたいな感じで。

中谷 アハハハ(笑)!

赤沼 言っちゃいけないかな(笑)?なんか、こう…マスコットみたいな感じなんですよ。だけど実はかなりドライな人だと思う。自分が描きたい世界観に対して、いらないものは完全に拒否するし「もっと膨らむな」と思ったら平気で採用する。「花嫁~」の時なんて、「おつカレーライス」をよく引っ張ってくれたなって。

中谷 アハハハハ(笑)!

赤沼 あれで何が広がるのかわからないけど(笑)。

中谷 いや、だから良いんですよ。

赤沼 うーん、そうなのかな?


・あの台詞は、赤沼さんのアドリブだったのでしょうか。

赤沼 そうなんです。吉田さんは脚本と演出の両方を手掛けられているので、「脚本・吉田武寛」が「演出・吉田武寛」になった時、書いている時は必要だったシーンでも、演出をしてみたら必要がなくなる、消してしまうシーンも出てくるんですね。その時は、共演の若い子たちが淡々とやっていたのもあって「これじゃあ、このシーンはカットになる」と思って(笑)、稽古場で突然、バンッと入れてみました。それがこの「おつカレーライス」です。みんなびっくりしていたよね?

中谷 「…!?」って、なりましたね(笑)。

赤沼 そうそう(笑)。最初はすごい違和感だったんですけど、途中から「おつカレーライス」に何の違和感もなくなってしまって、最後は「あの人はそういうことを言う人だ」みたいになってしまいましたね(笑)。

中谷 でも、だからこそ「トゥールビヨン製作は辞めざるを得ない、生活もうまくいかない」という展開の時に赤沼さんが言う「あと1カ月だ」という台詞が、すごく刺さるんですよね。普段ふざけている、フワッとした人が、ビシッと締める。その差が出る。「うわぁ、この俳優さん、すごいな…」って思いました。

 

赤沼 あそこだけだからね。

中谷 いやいや。

赤沼 あそこだけだから!刺せるの。

中谷 アハハハ(笑)!

赤沼 あとはどこ向いてるかわからないからね、俺。変なメガネかけてたり…。

中谷 何をおっしゃいますか、裏導線、めちゃくちゃ走ってたじゃないですか!

赤沼 フフフ(笑)。色々やったよね。

中谷 はい(笑)。

赤沼 遊んでいるわけじゃなくて、あくまで作品が膨らむようにとチャレンジしたり、真剣に、良い意味で「ふざけている」のですが、それを吉田さんが「良い」って言う時と「いらない」って言う時がハッキリしている。シビアともいえるのですが、それをしてくれるから、年上の僕でも吉田さんを信頼してふざけられる。「う~ん、どうしようかな」というのは、ほぼ無い。ちゃんと判断してくれるんです。そこは、すごく良いなと思っています。

中谷 吉田さんは、底が見えないですね。すごく勉強されているんだと思うのですが、出演させていただく度に「こんな引き出しもあったのか」と思わされます。
あと、吉田さんの演出に初めて参加した人は絶対に陥る現象だと思うこと。吉田さんは映像や音楽とマッチさせるのがとても上手いのですが、稽古場には(映像や音楽は)無い。だから「この動きは、今お客さんにどう見えているんだろう?」という見せ方に困惑すると思います。けれど劇場に入った瞬間、開いてしまっていたパズルのピースの隙間が、ガッ!って、はまるんです。それは、すごく楽しい。

赤沼 ちゃんと明確にできているんだよね。「これで良いんですか?」って(稽古で)聞いた時に「大丈夫、大丈夫」って言われるけど、何が大丈夫なのかが、現場に行くとわかる。

中谷 そこからまたひとつ、役者としても膨らむんですよね。

赤沼 そう。ガーンと上がっていく感じ。初めての人は困惑するかもしれないけれど、1回経験した人は「大丈夫」と言われたら「ああ、カチッとはまる瞬間が来るんだ」というのを、信じられる。なので(吉田さんの舞台)経験者が多ければ多いほど、スタートラインの位置も高くいけると思います。みんなで最初から「絵」を共有できる。


・まだまだ若い吉田さんのこれからが、本当に楽しみですね。

赤沼 天才だと思いますよ。すごいと思います。

(後半に続く)

 

【企画・構成:小宮山薫  取材・文:Murata Yumiko   写真:豊川裕之  ページ作成:名越未佳】

*後半はILLUMINUS CREW限定の記事となっています。
http://illuminus21.xsrv.jp/wp/magazine/?p=6704
*「ILLUMINUS CREW 」の詳細はこちら↓
https://illuminus.theshop.jp/

「喫茶ライフ」

 


【公演名】「喫茶ライフ」
【日時】:2017年12月6日(水)〜10日(日) 
【会場】:上野ストアハウス
【公演スケジュール】
12/6(水) 19:00〜(bitter)
12/7(木) 19:00〜(Sweet)
12/8(金) 14:00〜(bitter)   19:00〜(Sweet)
12/9(土) 14:00〜(Sweet) 19:00〜(bitter)
12/10(日)12:30〜(bitter) 16:00〜(Sweet)

【原作】 新妻悠太 (トップリード)「喫茶ライフ」
【脚本・演出】吉田武寛(LIPS*S,ILLUMINUS)
【演出協力】加治幸太(K-FARCE)
【Story】
ちょっと甘くて、ちょっと苦い。
人生はコーヒーに似ている。
喫茶店で行き交う人間模様を描いた、心温まるヒューマンドラマ!
短編傑作「喫茶ライフ」が、昨年の舞台化に続き本年も再演が決定。
再演では【bitter】、【sweet】とストーリーの結末が異なる二つのメニューをご用意。
クリスマスに起こる奇跡のストーリーをお楽しみに!

【出演】
中谷智昭 
絵川杏奈
忠海 蓉子
赤沼正一
澤井俊輝
春花きらら
奈良平愛実
【bitter】
春野遼子
新藤みなみ
波崎彩音
竹本和弘

【sweet】
久木田かな子
岡崎絵理菜(全力少女R)
千歳ゆう
宮島誠実

【チケット情報】
■チケット料金(税込)
・S席¥5000(全席指定席1~3列)
席選択可。事前決済(コンビニ決済、クレジットカード決済)。プレイガイドチケットペイでの購入となります。
*お気に入りキャストのオリジナルクリスマスカード付き
*1-2列については座高が低い椅子となります点ご了承ください。
・A席¥4300(指定席)
席選択不可。当日精算。カルテットオンラインにてご予約ください。

【Officiela Page】
http://kissa-life2017.strikingly.com
【Official Twitter】
https://twitter.com/Kissa_Life

【協力】
太田プロダクション
D.C.top-hat
八田プ ロダクション
リノア
テアトルアカデミー
Studio Life
ぱるエンタープライズ
style office
JUSTICE
エスエスピー
シャイニングウィル

【企画・制作】
ILLUMINUS (運営:FreeK-Laboratory,LLC)

 

 

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA